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福岡高等裁判所 平成10年(ネ)984号 判決 1999年8月31日

大阪市北区西天満二丁目四番四号

控訴人

積水樹脂株式会社

右代表者代表取締役

増田保男

右訴訟代理人弁護士

吉利靖雄

小野昌延

山口県玖珂郡周東町大字祖生六三七〇番地

控訴人補助参加人

サンエイポリマー株式会社

右代表者代表取締役

船田弘隆

東京都中央区日本橋小舟町四番一号

控訴人補助参加人

平成ポリマー株式会社

右代表者代表取締役

玉谷恭一郎

新潟県北魚沼郡川口町大字川口二一三三番地の一

控訴人補助参加人

信越工業株式会社

右代表者代表取締役

山下孝正

埼玉県鴻巣市大字箕田字吉右工門三一三二番地

控訴人補助参加人

大日製罐株式会社

右代表者代表取締役

丸木眞二

東京都千代田区鍛冶町一丁目八番五号

控訴人補助参加人

執行商事株式会社

右代表者代表取締役

大津山峻茂

東京都中央区東日本橋一丁目一番七号

控訴人補助参加人

宇部日東化成株式会社

右代表者代表取締役

藤井宏三

右六名訴訟代理人弁護士

芹田幸子

北九州市八幡東区前田企業団地五番一号

被控訴人

株式会社ケイユー

右代表者代表取締役

渡邉藤明

右訴訟代理人弁護士

中野昌治

中野敬一

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とし、当審で生じた参加費用は控訴人補助参加人らの負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、原判決添付物件目録一及び二記載のポリプロピレン製樹脂バンドを輸入し、販売し、販売のために展示してはならない。

3  被控訴人は、控訴人に対し、一一五二万円及びこれに対する平成八年五月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

5  仮執行宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  事案の概要

本件事案の概要は、次に補正するほかは、原判決四頁九行目から一四頁五行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決五頁六行目の「またはシボ」を「。シボともいう。」と改め、七頁九行目の「目録」の次の「二」を「一」と改め、八頁一〇行目の「PPバンド」の次に「(またはP・Pバンド)」を加え、一二頁九行目の「(予備的主張)」を削る。

二  同一四頁五行目の次に改行して、次のとおり加える。

「(なお、控訴人は、当審において、前記2の主張を、従前の予備的主張〔請求〕から択一的主張〔請求〕に変更した。)」

第三  証拠

証拠関係は、原審及び当審記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四  当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に補正するほかは、原判決一四頁七行目から三四頁四行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一四頁八行目の「一六、」の次に「丙一、」を加え、「によれば」を「及び弁論の全趣旨を総合すれば」と改め、一五頁一行目から二行目にかけての「原告補助参加人」と一六頁四行目冒頭の「原告は、」を削り、五行目の「原告は、」の前に「その後、」を加え、五行目から六行目にかけての「機械適性に優れた」を削り、二〇頁六行目の「製造過程」から八行目の「不満が述べられ」までを「『今更特許と言われても』といった不満が述べられていたことを踏まえ」と改め、二一頁三、四行目の「はそのうちの」を「だけでも」と改める。

二  同二一頁七行目の「あるが、」から八行目冒頭の「自体が、」までを「あって、本来商品の出所を表示することを目的とするものではない。しかし、その形態が」と改め、九行目の「他の」から一〇行目の「そなえ、」までを削り、二二頁二行目の「足りる」の次に「自他識別機能、」を加え、三行目の「周知」を削り、五行目の「原告の周知」を「同号の」と改め、二三頁末行の次に改行して、次のとおり加える。

「なお、証拠(甲三一六ないし三二二、三四〇の1ないし8、検甲一)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人及び控訴人補助参加人らの担当者がポリプロピレン製樹脂バンドの断片を見本として貼付したカタログを持参して取引先を訪問したり、控訴人がP・Pバンドのカラー写真のついた広告を業界のカタログ集に掲載していることが認められる。しかし、これらのカタログや広告には、縦長菱目エンボス模様が控訴人商品及び控訴人補助参加人らの商品の外形的特徴である旨の記載がないばかりでなく、縦長菱目エンボス模様とは明らかに異なる模様のポリプロピレン製樹脂バンドの見本や写真も含まれているから、右の事実は、前記認定の妨げとなるものではない。

また、控訴人は、当審において、被控訴人が控訴人商品と類似の形態を採用することは回避できたはずであり、また、回避できなかったとしても混同回避措置を採るべきであった旨を主張するが、右は、いずれも商品表示性の要件に関する問題ではない。」

三  同二四頁一〇行目の「四四」の次に「、五七の1、2」を加え、末行の「昭和五〇年一一月」を「昭和五四年八月」と改め、二六頁一行目の「昭和六一年」を「昭和六二年」と改め、二八頁一行目の「昭和六}年一〇月」を「昭和六二年三月」と改め、二九頁六行目末尾の「失わ」から七行目までを「相対的に低下するといわざるを得ない。」と改め、九行自の「周知」を削り、三〇頁一行目の「事実は」を「認証票(乙一五)には、『P・Pバンド特許認証票』及び特許番号が記載されているにすぎないから」と改め、二行目の「周知」を削る。

四  同三一頁一〇行目の「すぎない」の次に「(甲九)」を加え、三二頁三行目の「周知」を削り、四行目の次に改行して、次のとおり加える。

「これに対し、控訴人は、当審において、不正競争防止法二条一項一号の『他人』には、商品表示の持つ顧客吸引機能、出所識別機能を保護発展させる目的において共通の利害関係を有する複数の営業主体からなるグループも含まれる旨を主張する。しかし、同号の趣旨は、他人が築き上げた社会的信用のある商品表示を無断で使用することが公正な競争の理念に反するとする点にあることに鑑みれば、複数の営業主体の商品表示については、その社会的信用を維持するための集団的な努力が払われたことを要すると解するのが相当であり、単に利害関係が共通するだけでは足りないというべきである。したがって、控訴人の右主張は、採用することができない。」

五  同三三頁八行目の「前記」の次に「エンボスズラシ」を加え、三四頁四行目の次に改行して、次のとおり加える。

「3 しかし、被控訴人商品の品質、性能が劣るといっても、それは控訴人商品や控訴人補助参加人らの商品と比較した場合の相対的な評価であって、被控訴人商品自体がポリプロピレン製樹脂バンドに一般的に要求される品質や性能を欠いていることが窺える証拠はない。また、被控訴人商品を梱包した段ボール箱には、『ケイユーPPバンド』と商品名が記載され、これが被控訴人を輸入元とする商品であることが明記されている(検甲七の1、2)し、被控訴人商品の販売に当たり、縦長菱目エンボス模様と関係付けて、実際以上の高い品質、性能を備えているなど真実に反する宣伝が行われた形跡もない。さらに、控訴人商品や控訴人補助参加人らの商品には前記認証票が貼付され、控訴人のエンボスズラシ特許を使用して製造したものであることが明示されている上、証拠(甲七三ないし三一五)によれば、控訴人及び控訴人補助参加人らの取引先である梱包資材販売業者らの多くは、被控訴人商品と控訴人商品や控訴人補助参加人らの商品とを明確に区別し、被控訴人商品は低価格であるが品質が劣るとの認識の下に、被控訴人商品を扱う積りはないと考えていることが認められる。

縦長菱目エンボス模様は、表裏両面の模様をずらすことによって、ポリプロピレン製樹脂バンドの走行性や強度の向上をもたらすものであり、したがって、この模様を使用することは、当該ポリプロピレン製樹脂バンドが高品質であることを表示したものと解する余地がないわけではないが、右判示の諸事情を総合考慮すれば、被控訴人商品に控訴人商品に似た縦長菱目エンボス模様が施されていることが、取引者や需要者に被控訴人商品の品質等を誤認させる行為に該当するとは認められない。

4 右判示のとおり、被控訴人商品には、その品質等を誤認させるような表示があるとはいえないから、控訴人の不正競争防止法二条一項一〇号に基づく請求は、理由がない。」

第五  結語

以上の次第で、控訴人の本件各請求は理由がないから、これを棄却した原判決は相当である。

よって、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結の日 平成一一年六月三日)

(裁判長裁判官 小長光馨一 裁判官 長久保尚善 裁判官 石川恭司)

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